大判例

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福岡地方裁判所 昭和37年(ヨ)47号 決定 1962年2月12日

申請人 太陽タクシー株式会社 外一名

被申請人 江上芳高 外一二八名

主文

一、別紙第一目録記載の土地及び建物(但し、同目録記載の建物中(二)の共同住宅のうち、同目録添附の見取図に記載の二、三階の寮の部分を除く)無蓋車庫、ガソリンスタンド及び検車台(同目録添附の見取図のとおり)並びに別紙第二目録(イ)、(ロ)に記載の各自動車に対する被申請人等の占有を解き、これを申請人等の委任する執行吏の保管に附する。

二、被申請人等は、前項記載の各土地、建物に立入つてはならない。但し、第三項に記載の場合を除く。

三、右執行吏は、別紙第三目録記載の被申請人等から、日常生活の為め前記共同住宅の前掲寮の部分を使用するに際して申出があるときは、その者に対して、別紙第一目録添附の見取図に記載の裏側出入口(裏小出入口を含む)から出入りする場合に限つて、右裏側出入口と右共同住宅との間の土地の通行、並びに右共同住宅中の食堂、風呂場、便所及び階段その他の共用部分の使用を許すことができる。

四、右執行吏は、申請人等の申出により、申請人等が右執行吏の保管にかかる各土地、建物及び施設を、申請人太陽タクシー株式会社が別紙第二目録(イ)に記載の各自動車を、申請人スタータクシー株式会社が別紙第二目録(ロ)に記載の各自動車を、それぞれ使用して業務を行うことを許すことができる。

五、執行吏は、本件仮処分の趣旨を公示する為め、適当な処置をとることができる。

(注、無保証)

(裁判官 江崎弥 至勢忠一 岡野重信)

(別紙)

第一目録

一、土地の部(添附見取図記載の外柵で囲まれた部分)

福岡市筑紫町壱四番地

一、宅地 百五拾参坪

(以下一一筆省略)

二、建物の部

(一) 福岡市筑紫町壱四番地

家屋番号 筑紫新町五九番参

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建 事務所 一棟

建坪 五拾五坪壱合四勺

附属建物

一、鉄骨造スレート葺平家建 車庫 一棟(添附見取図記載の車庫整備工場)

建坪 六拾八坪参勺

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建 便所 一棟

建坪 五坪四合四勺

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建 倉庫及控室 一棟(添附見取図記載の控室、部品庫)

建坪 拾坪八合九勺

一、鉄骨造スレート葺平家建 洗車場上屋(添附見取図記載の洗車場、検車場)

建坪 百参坪九合五勺

(二) 福岡市筑紫町壱七番地の壱、壱七番地の弐、弐拾九番地

家屋番号 筑紫新町五九番四

一、鉄筋コンクリート造陸屋根参階建 共同住宅 一棟

建坪 一階 五拾弐坪五合参勺

二階 五拾弐坪五合参勺

三階 五拾弐坪五合参勺

見取図<省略>

第三目録

太陽、スタータクシー従業員入寮者名簿

所在地 福岡市筑紫町十四番地

太陽、スタータクシー株式会社本社

萩原早人(外二〇名省略)

(第二目録省略)

〔参考資料〕

仮処分命令申請書

申請の趣旨

一、別紙第一不動産目録記載の土地及びその地上建物、施設(添付図面参照)中、別紙第三目録記載の被申請人等が各自占有居住中の寮の部分を除くその余の部分及び第二目録記載の自動車に対する被申請人等の占有を解き、申請人等の委任する執行吏にこれが保管を命ずる。

二、被申請人等は第三目録記載の被申請人等が日常生活の為め裏出入口から出入する場合を除き第一目録記載の土地、建物に立入つてはならない。

三、執行吏は申請人等の申出により右土地、建物内においてその従業員を指揮し業務を行うことを許すことができる。

四、執行吏は第三目録記載の被申請人等の申出により、食堂、風呂場、便所の使用を許すことができる。

五、執行吏は前各項記載の趣旨を公示する為め適当な方法をとらねばならない。

六、この命令に違反した場合には執行吏は適当な処分をすることができる。

右趣旨の御裁判を求める。

申請の理由

一、申請人等はタクシー営業を目的とする会社であつて、何れも福岡市に本店を有し、代表取締役を同じくする姉妹会社である。その所有する営業用車輌は太陽三一台、スター二七台合計五八台である。被申請人等は申請人等の従業員であつて、昭和三十六年十二月二十九日までは太陽、スター合同労働組合の組合員であつたが、同日右合同労働組合は解散した。

二、今次労働争議の経過の大要と被申請人等の違法行為

(一)、申請人等(以下会社と略称する)は被申請人等が組織していた前記太陽、スタータクシー合同労働組合(以下単に組合という)に対し、昭和三十六年十一月八日、組合乗務員一人平均の年末一時金を金一九、五〇〇円支給することとしたい旨通知したが、組合は三五、〇〇〇円を要求し、其後数回にわたり団体交渉が行われた。同年十二月六日会社は前記金額を二四、〇〇〇円まで引上げたが組合は会社の最終回答額の外に尚組合に対し一括一〇〇万円を要求して譲らず、遂に年末一時金に関する交渉は決裂した。

(二)、組合は同年十二月八日から全面無期限ストに突入し、太陽本社正門附近に会社資材を用いて木材を組合はせバリケードを築き、有刺鉄線を張り巡らし、多数組合員でピケを行い、翌九日午後五時頃組合執行委員長江上芳高は会社に対し十日以降会社側役付職員の本社構内えの出入を阻止する旨通告した。

(三)、会社の営業部長福井守が翌十二月十日午前八時半頃本社に出社したところ、正門前で組合江上委員長、諸井副委員長はピケ中の多数組合員と共に同人の入門を阻止し「社長を連れて来て団体交渉せよ、その他の用件では入門させない」旨申向け、同人の入門を阻止した。同部長は同日午後四時頃「会社の土地建物えの組合員の立入禁止及び会社什器備品諸施設の使用禁止」及び「営業部長の入門を阻止するような不法行為の停止」を組合に要求する申入書を手交すべく、組合員の占拠する太陽本社に赴いたが、再度ピケ隊の為め入門を阻止された。同部長は止むなく其場にいた組合員の一人に右申入書を手交し、江上委員長に渡してくれるよう依頼して引返えし、市内永田町日赤病院前で帰りのバスを待ち合はせていたところ、諸井副委員長外十数名の組合員が追いかけて来た。諸井副委員長は同部長が先刻渡したばかりの会社からの申入書の説明を求めたい旨申向け、同部長を本社に連行した。同部長が本社に連行されるや約九十名位の組合員が同部長を取り囲み、

団交に応ずるように出来ぬなら営業部長を辞めろ。お前達の給料は俺達が払つておるんだぞ。この月給ドロボー奴。お前は会社の手先になるより組合について来い。社長が馘にすると云つても組合が一波打つて阻止してやるぞ。ハゲの馬鹿野郎、日田バスに帰れ。お前はツンボか唖か。こづき廻せ、一突きにせよ。なんぼ云つてもわからぬなら一刺し刺せ。一刺し刺しても誰かゞ一人ブタ箱に入ればよかとや。

等悪口雑言、吊し上げられ脅迫された。約一時間半かゝる状態の中に閉じ込められたが高尾総評オルグのとりなしでやつと会社から出ることが出来た。

(四)、会社は組合がスト突入後会社の所有車輌を太陽本社に集結し、車体検査証、車体の鍵を組合の占有下に置き会社に返還せず、前述のような違法行為が行はれるに至つたので、同月十一日までの間に数回にわたり、会社所有物件の返還及び違法行為の停止を文書を以て要求したが(疏甲第一号証乃至第五号証)組合はこれに応ぜず、組合は同月十二日午前中会社の承諾を得ることなく無断で車輌三三台を本社から持出し福岡市内を示威運行(パレード)し、更に同月十四日午前八時過ぎから佐世保市に居住する会社代表取締役吉川秀雄と団体交渉する為めと称して、前同様の方法で会社車輌三三台を無断持ち出し佐世保方面に向つてキヤラバンを行つたが佐賀県大町々で停止し同地に二泊の上、十六日午後五時頃本社に帰着した。かゝる組合の度重なる違法行為に対し会社は更に厳重抗議し、尚この上の不詳事の発生を恐れて、会社構内からの組合員の立退と会社所有物件、車輌等の返還を組合に要求したが、組合は全く反省の色なく、これに応じなかつたものである。

(五)、会社と組合との直接の話合による争議解決が困難となつたので、福岡乗用旅客自動車経営者連盟井上直治会長等と福岡地区労横尾事務局長、総評高尾オルグ等との間に争議解決の為めのトツプ会談が十二月十一日頃以降始まつていたので、会社としてはトツプ会談の成果を期待し、法的手段などに出ることを差し控えていたが、同月二十四日未明組合は会社の岡田常務及び福井営業部長の私宅にアジビラ十数枚を貼り、同日午後二時頃には更に右両名の私宅にデモをかけ、岡田常務宅の出入口の戸の一部を毀し、玄関のガラス一枚を破損し、福井営業部長方では表札を取りはずし、靴で踏みにじる等の違法行為を敢えてした。こゝに至り会社としては組合側の度重なる違法行為に対し組合幹部の責任追及を考慮せざるを得なくなり、この為めトツプ会談も遂に実を結ぶことが出来なくなり、同月二十七日を以て打切られた。

(六)、ところが同月三十日午前八時頃、突然従来の組合が解散し、ストを解除する旨の江上委員長からの通告を受け会社側は事態の急変に驚いている内に、約三十分後には全国自動車交通労働組合福岡地方連合会合同労働組合執行委員長坂本秋男の名を以て前記の通り解散した組合員が、新しい名称の合同労働組合に個人加入した旨の通告を受けとつた。更に一時間半位後の同日午前十時五分頃に右合同労組委員長坂本秋男名義で左の要旨の納金拒否部分ストの通告書を会社は受取つた。

(イ) 組合は納金拒否部分ストを行う

(ロ) 運収その他の収入を預託する銀行は団交で決定する

(ハ) 預託した運収その他の収入を引出す手続には労使双方の署名捺印を要する

(ニ) 納金ストは部分ストであるから車輌の運行、配車その他の管理は一切会社で行うこと

(ホ) 昭和三十六年十二月三十日から部分ストに入るので直ちに就労できる体制を会社は準備せよ

(ヘ) 部分スト突入後会社が就労体制を全面的に若くは部分的にとることができないときは組合が全面的若くは部分的にやむを得ず管理を行うことがある

(ト) (ヘ)の事態に直面した場合組合は預託した運収その他の収入から運行管理に必要な経費を引出すことがある。この際も横領、いんとくその他他意はない。

(七)、然るに右納金拒否部分ストの通告を会社が同日午前十時五分頃受取つたときは、組合は右通告書において、車輌運行配車その他の管理一切は会社で行うよう申入れながら、会社が就労体制を準備する余裕を与えず、既に同日朝八時過ぎから被申請人等を会社の所有する営業車輌に乗車し運行せしめ、会社の管理を排除して、組合の業務管理に入つていたのであつて、かゝる卑劣極まる暴挙は到底労働法上正当な争議手段とは云い難いものである。そこで会社は同日午後三時半頃右組合による業務管理を即時中止すべき旨の要求書を新合同労組に持参したが、山本書記長は右書面を一瞥したゞけで受領を拒絶した(疏甲第一七号証参照)。会社は止むなく翌三十一日同趣旨の要求並びに従前から幾度も旧組合に対して要求していた会社物件の返還及び組合員の本社構内からの立退を重ねて要求する為め内容証明郵便を以て新組合に要求した(疏甲第一八号証)。

(八)、新組合が会社の管理を排して被申請人等をして会社所有の車輌の殆んど全部を運行せしめ前記納金拒否部分ストを開始してから本年一月三日頃までの状態を会社に於て調査したところ、年末年始の最繁期で通常の運賃収入は一日二交代で一乗務員につき平均六、七千円を下らない水揚があつて居る筈であるのに、被申請人等乗務員は三千円余位を新組合に納金し、残余の運賃収入はすべて被申請人等の恣しいままな着服を許している疑が濃厚となつたので会社は本年一月六日新組合の幹部達を業務上横領教唆の容疑で福岡警察署長に告訴した。(疏第二八号証)。

(九)、事こゝに至り会社は新組合及び被申請人等の違法な争議手段に対抗し、企業の防衛を図る為め遂に一月十日付を以て同月十二日正午以降ロツクアウトを実施する旨及び新組合が被申請人等をして占有せしめている会社所有車輌その他の物件をすべて会社に返還し、会社構内から退去すべき旨内容証明郵便を以て通告した。会社は右通告に基き同月十二日正午会社所有物件の受領及び新組合及び被申請人等の退去を求めるべく被申請人等が占拠する本社事業場に赴いたが、被申請人等組合側は前記ロツクアウトの通告書がその翌一月十一日新組合に到達し旧合同労組の委員長江上芳高がこれを受領しているに拘らず、新組合の幹部が不在であり、ロツクアウト通告の事実は知らないととぼけ、会社の要求を拒否した。

(一〇)、新組合はその際被申請人等を始め他労組の応援を得て二百名以上を動員して会社正門附近に集結し居り、会社車輌のみならず他労組の応援車輌も五十輌以上に及び、新聞等報導機関の人達も相当数現場に集まつて居つて物々しい状況を呈していた。組合以外の人達が会社のロツクアウト実施を予知して現場に多数来ているのに、組合側がロツクアウト通告の事実を知らないというのは誠におかしな話である。納金拒否部分スト中でそれまで毎日組合管理の下に会社車輌を運行して置き乍ら、会社がロツクアウト実施日時と定めた一月十二日正午に何故組合は会社車輌の運行を中止して本社に集結させたのか。口ではロツクアウト通告を知らないとはいうものゝ、かゝる組合側の措置を見るとき、ロツクアウト通告は組合側に完全に知悉せられていたものと推断せざるを得ないのである。申請代理人も会社の福井営業部長に附添つて現場に赴き、正門前で福井部長と相対していた福岡地区労横尾事務局長、高尾総評オルグに対し、会社としては、一月十日ロツクアウト通告を内容証明郵便で発し、同月十一日には同郵便は組合側に到達して居る筈であり、とにかく会社としては当一月十二日正午以降ロツアウトを実施する旨附言して引揚げた。会社側は組合幹部が不在で交渉相手がいないので、会社物件の返還や、組合員の即時立退要求を諦め、市内倉所町福岡乗用自動車経営者連盟に一応引揚げたが、約十五分の後、組合側幹部で不在であつた筈の坂本秋男執行委員長、福島幸雄執行委員、元合同労組委員長江上芳高等が車輌約三十台を連ね、自労組員や他労組員約一〇〇名を動員して押しかけて来た。その云うところは会社側の争議手段を指導しているのは福乗連(右経営者連盟の略称)であるから、新しい争議手段(ロツクアウトを指す)に訴えずに会社側に組合との団体交渉を開くようにせよというにあつた。一時間半位も喧騒状態が続いたが、その結果同月十三日午後団体交渉をもつことに決定した。併しこの団体交渉も組合側幹部の責任問題で両者の意見に喰い違いがあつて決裂するに至つた。

三、仮処分の必要性

(一) 本件労働争議の目標である昭和三十六年度年末一時金支給額については被申請人等は今日に於ても申請人の最終提案額で満足せず、向う見ずの要求額を引込めないのであるが、福岡市内の他の同業者の妥結額を見るに疏甲第二六号証で明かなように市内各社の平均支給額は二二、〇〇〇円程度であつて、会社の提案額は上位から四位にあり決して不当な額ではない。然るに組合側は会社の経営状態、経理内容の説明に耳を藉さず、その要求貫徹の為には手段を選ばず、次々に不当、違法な争議行為に訴えて来た。会社は組合側との話合いによる解決の困難と企業防衛の見地から昭和三十七年一月十六日御庁に立入禁止、物件引渡等仮処分申請を為し、目下御庁昭和三七年(ヨ)第二二号事件として審理中である。然るに右審理の過程に於て、被申請人として表示した新組合即ち全国自動車交通労働組合福岡地方連合会合同労働組合は実は組合規約もなく、相手方が仮称したゞけで、その実態のない労働組合であること、その実態は全国自動車交通労働組合福岡地方連合会(全自交福岡地連と略称する)であることが判明した。従つて前記仮処分申請は被申請人の表示を訂正するの必要があるが、相手方は種々奇策をめぐらし、仮処分の執行を逃れんとする恐れがあるので、前記納金拒否部分ストを現実に実行している被申請人等を相手方として更に本件仮処分申請を為す次第である。

(二) 本件ロツクアウトについては、その通告のみで、作業所閉鎖の事実行為は為されていない。或る種のロツクアウトについては通告のみでは足らず、締め出しの事実行為が伴はなければロツクアウトの効力を生じないとの学説、判例があるが、本件の場合のように相手方が事業場を占拠し、会社側の出入を阻止し、最後には会社側の生産手段を排他的に支配し、会社自らの生産手段による操業の自由を奪う、所謂生産管理又は業務管理の場合には通告のみを以てロツクアウトの効力発生するものと解すべきであつて、判例、学説もある。本件のような場合組合側を締め出す事実行為を会社が実力で行はうとすれば、暴力、傷害等の事件の発生は必至であり、実力と実力で争うことは民主主義の原理にも反することゝなる。誠意ある団体交渉を以てしても解決しない場合は、実力でなく、法的手段によつて合理的に解決するの外はない。これ会社側が一切の実力行使を避けて出来る限り話合いで解決すべく今日まで隠忍自重した所以である。有効なロツクアウトを実施しようとしても、この実現が不能に近い現状の下に於て会社側のとり得る手段は裁判所の仮処分命令を得てこれを執行する一途あるのみである。

被申請人等は全自交福岡地連の指揮下に会社車輌を運行し、その運賃収入の内から生活を支えているらしいが、会社は争議開始以来既に二ケ月、収入皆無でこのまゝの状態が続くならばやがては倒産の結果を招くのみである。

最後に一言する必要があるのは、被申請人等の内から会社事務所内の経理係長の机の抽出から現金五千円位を窃取した者のあることである、事件は二月一日午前零時半から三時半位の間の出来事であり、被害は軽微とは云え、施錠を取毀し会社役職者の机の挿出から金品を盗取しているものである。

このまゝ被申請人等に会社施設が不法占拠されているならば今後如何なる不祥事が発生するか逆賭し難いものがあり、裁判所による仮処分命令の必要である状況は愈々顕著なものがあるのである。

又被申請人等は一月末頃八幡市黒崎にある黒崎タクシー株式会社と同労組との間の争議が発生するや、総評系の第一組合を応援する為め二、三回にわたり勝手に会社所有の車輌十数台を運行して八幡市に赴いた事実も最近判明している。道路運送法第二五条の二によれば、車輌の運行管理の為め、会社は運行管理者を選任してその責任に於て車輌の運行の安全を確保するよう定められ、運行管理者が同法又は同法に基づく命令に違反したときは三万円以下の罰金に処せられ(同法第一三〇条第二号)、又解任を命ぜられることになつているが、交通事故の頻発する昨今、又これが対策に官民ともに力を入れている今日、会社選任の責任ある運行管理者の指揮命令の下でなく、組合の業務管理下にあり責任ある運行管理が行はれていない被申請人等の運行の場合は果して交通の安全が確保されるであろうか、一般社会人の交通禍を防ぐ意味からも一日も早く仮処分命令により被申請人等の車輌占有を解く必要があるのである。

又万一事故が起つた場合、組合管理下の運行であつても会社は第三者に対しては損害賠償の責を免れることは出来ないと思はれるので、会社は思はざる損害を蒙る恐れも十分にあるのである。

仮処分の必要性と緊急性は以上を以て十分であろうと思料する。

(別紙省略)

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